線形代数

対称行列と交代行列

任意の正方行列は対称行列と交代行列の和で一意的に表されることを示せ。

$A$ を任意の $n$次正方行列とする。このとき
\begin{align}
B &= A + {}^{\rm T}A \\
C &= A – {}^{\rm T}A \\
\end{align}
として、行列 $B, C$ を定める。このとき $B, C$ は各々対称行列、交代行列であることが分かる。
実際に
\begin{align}
{}^{\rm T}B &= {}^{\rm T}\!(A + {}^{\rm T}A) \\
&= {}^{\rm T}A + A \\
&= B \\
{}^{\rm T}C &= {}^{\rm T}(A – {}^{\rm T}A) \\
&= {}^{\rm T}A – A \\
&= – C
\end{align}
となり、$B, C$ が各々対称行列と交代行列であることが分かる。
このとき
\begin{align}
A &= \frac{1}{2}(B + C)
\end{align}
となり、任意の正方行列は対称行列と交代行列の和で書けることが分かる。

次に一意性を示す。$A$ が、$B, C$ と $B’, C’$ の対称行列と交代行列で書けるとする。
すなわち
\begin{align}
A &= B + C = B’ + C’
\end{align}
であるとする。このとき
\begin{align}
B – B’ &= C’ – C
\end{align}
となり、左辺は対称行列であり、右辺の交代行列であるので、対称行列でもあり交代行列でもある行列は O 行列でなくてはならない。
すなわち
\begin{align}
B – B’ &= C’ – C = O \\
B &= B’ \\
C &= C’
\end{align}
が得られ、一意性が示される。